乗り合い路線バス特有の車内事故

このページではバス運転手が最も警戒すべき事故の実態について書きました。乗り合いバスならでは、普通車では起こりえない事故である「車内事故」というものについてお伝えします。
バス運転手は全員プロです。しかしプロであっても交通事故は起こります。
事故の形態としては昼間の単独事故が群を抜いて多いです。
それもバスの車内でけが人が出るケースが最も多いです。
このページではバスに特有の車内事故を題材にし、バス運転手の知っておくべき実態をお伝えします。

車内事故の正体とは

ハンドルを握る仕事なので事故はつき物です。本人の上手い下手もあるでしょう。しかし、運転手の努力だけでは防ぎようのないバス特有の事故があります。「車内事故」または「車内人身」と呼ばれるものです。
これは本来、急ブレーキなどでバス車内で立っている人が倒れたり体をぶつけたりする人身事故です。被害者の90%以上は高齢の女性です。ですので年寄りの多い時間帯である昼間に集中しています。
急ブレーキでなくとも足元のおぼつかない年寄りが車内をうろうろし、ちょっと揺れただけでも転んで受身もまともに取れず、頭をうって死亡するケースも多いです。
なのでバス車内には席を立たないよう注意するポスターがたくさん貼られていますが効果はありません。
運転手の意見としては車内事故で怪我をする人間のほとんどは自業自得で勝手に転んでいます。危険だから座るように注意すると「年寄り扱いされた」と逆ギレする始末の悪さです。ですので「被害者」と呼ぶのも嫌です。

 

バスの車内事故の責任

この車内事故の特徴は必ず単独事故として扱われることです。
けが人が出ていれば人身事故です。けがの程度によりますが、一回で免停か免取です。警察からも「アンタはプロなんだから」と言われて厳しく扱われます。
通常の交通事故であれば単独でなければ相手が必ずいます。そして相手に過失があればこちらの責任の度合いは低くなります。
車内事故の場合は単独ですからバス側が必ず100%の責任を負います。プロの運転手がお金を払って乗車した客に単独事故で怪我をさせたのですから責任は重いです。
たとえば信号無視などで自転車が飛び出し、それを避けるために急ブレーキをかけ、車内事故に至る。というケースが一番多いです。
この場合は自転車側が警察に信号無視をしたことを申し出て、自分の責任であることを認めない限りはバス側が全責任を負います。これなら自転車をはねたほうが安く済みます。お金を払った乗客に怪我をさせたとなると責任は重いですから。実際車内事故をやるより突っ込め、という暗黙の了解があります。
ここまでは前置きです。車内事故の本当の恐ろしさはここからです。

車内事故は当たり屋の温床

車内事故の場合は証拠もほとんどなく、被害者の自己申告で事故が成立します。これに味を占めた当たり屋がたくさんいます。
赤信号で止まるタイミングに合わせてわざとしりもちをついたり腕を手すりにぶつけたり。この程度でも喜んで診断書を書いてくれる医者もたくさんいます。
全治数日程度の打撲傷程度ならばすぐに作れるし傷がなくても診断書は書けます。診断書をすぐに書いてくれる医者は年寄り受けがよくていつも混んでいます。
警察でも診断書が出ている以上は事故として処理しなくてはなりません。
ほかの乗客の目撃証言に助けられることもありますが、ごく稀です。
ある日突然診断書を持って会社に乗り込んでくる場合もあります。「数日前にバス車内で怪我をした」と後になってから言われると目撃者や証人の確保はできないのでなおさら無実の証明は難しいです。
実際にバス内で転んだ場合、その場では「大丈夫です」と言いそのまま降りて行った場合でも周りから「お金もらえるよ」と入れ知恵されて後日電話してくる場合も多々あります。
バスに乗って痛いといえばお金がもらえる、なんて噂を本気で信じ込んでいる年寄りも珍しくありません。私の周りにもでっち上げの車内事故で免停になり、嫌になって辞めていった仲間がたくさんいます。
今後ますます日本の高齢化は続いていきます。車内事故の予備軍は増えていきます。どれだけ自動車の技術が進化しても車内事故だけは防ぎようがありません。
以上、バスの車内事故の実態と責任の重さについてお伝えしました。