バス業界の現状と今後の動向

このページではバス業界全体の総論としての現状や予想されうる今後の動向をお伝えします。
バス業界はどこも何とかやっていけているといった程度の経営状態といえます。売り上げの低下分を人件費の削減で補っているのが現状なのです。
業界全体として企業努力は人件費の削減だけしかしていないといっても過言ではありません。もちろんいちばん削減されているのは運転手の給料です。

コスト削減は給料カットがメイン

バス会社のコストカットは運転手の給料くらいしか削れる部分はありません。バスの車体にかかるお金はほぼ決まっています。最も人数の多い構成員である運転手の給料を削るのが会社にとって都合の良いことです。
コストの削減の手段としての運転手の給料カットはもはや限界の域にまで達しています。
キャリア10年の私でさえ年収は400万円台半ば程度です。一応は形だけは年功序列なのでわずかづつは毎年昇給しています。
新人当時は年収300万円台でした。これ以上給料が安くなると生活できません。人手不足の状況にますます拍車がかかります。
詳しくはバス運転手の給料は本当はいくらもらえるのか?をご覧ください。
また、今後労働組合の無力化により待遇の改善は見込めません。
労働組合の現状については労働組合がある会社ではこんなことをやらされるをご覧ください。

運転手の需要は増えていく

バスの運転手の需要は今後増えていくはずです。
これ自体は業界を目指している人にとっては朗報です。今後はコミュニティバスなどは増加が見込まれています。いわゆる「買い物難民問題」など高齢化社会に対応するための需要が増えていきます。
また、バスの運転手は平均年齢が高いので定年退職が今後増えていきます。その穴埋めの求人が増えていきます。バスは一台につき運転手が一人必要です。これだけは変えようがありません。なので路線数に応じた人員が必要です。
バス会社がコストの削減を給料カットしか出来ないのは人員削減がしづらいからです。
どのバス会社も1年中求人を行っています。なので求人は常に豊富にある、超人手不足の業界と言えます。
詳しくはバス運転手は人手不足で休めないをご覧ください。

自動車の自動運転化によるバス業界への影響

近年は自動車が自動運転技術を取り入れたらドライバー職はいらなくなると言われていますが、私はそうは思いません。
ドライバー職がいらなくなる日が来ることになるとしても近い将来ではないでしょう。
自動車の技術の発展は目覚ましいとしてもバスを取り巻く環境はどうでしょうか。
例えば、駅前の商店街など歩行者の間を縫って走るような路線も多いです。このように歩行者との距離が近い場合、自動運転なら安全装置が働きっぱなしで動けなくなってしまうでしょう。
自動運転システムを完全に導入するとなると道幅を広げる、歩行者用道路と車道を完全に分ける、他者も交通法規を完全に守ることが前提条件などの制約が出てくるかと思います。
つまり、自動運転化の影響でドライバー職が全く必要ない状態になるためには自動車側の技術だけではなく、社会とインフラ整備も変わる必要があります。これが実現するには何年必要でしょうか?
未来の動向を完全には予想できませんが、ドライバー職が必要なくなるのはまだまだ時間がかかりそうです。
なのでバスの運転手が一斉に職を失うのは近い将来の話ではありません。

バス会社の収益性は悪化していく

バス業界には「政治路線」と揶揄される路線があります。地方自治体や地元の議員などから要請されて運行するものです。
前述のコミュニティバスもこの一つです。こういったものははっきり言って儲かりません。高齢者や障害者などのいわゆる「社会的弱者」のために運行する場合がほとんどです。
なぜ儲からない路線を運行するのかといえば他のドル箱路線を独占するための取引をするからです。
政治路線を引き受ければ新規の儲かりそうな路線を開業する際に有利になるからです。(入札や路線認可を得る際などは行政との癒着は不可欠です。)これまではこれのおかげで帳尻を合わせていました。
しかし、新駅開業や駅前再開発などによる駅近マンションの増加により現役世代はバスに乗らなくなります。ドル箱路線は減っていく一方です。儲かる見返りは減り、負担となる政治路線は増加していきます。
どんどん収益性は悪化していきます。バス自体への需要は増えますが業界規模(金額ベース)は縮小していきます。こうなると運転手の待遇の悪化につながります。

公営バスは民間委託で人件費カット

公営バスでも経営努力は人件費カットがメインです。
その手段は民間委託です。
例えば東京都交通局(都営バス)の場合、半数近くの営業所が民間に委託しています。観光バスで有名な「はとバス」が委託を受け、求人しています。
(東京都がはとバスの大株主になっています)
興味のある方ははとバスのホームページの求人ページをチェックしてみてください。はとバスに採用されて都営バスを運転しても身分は民間人です。公務員にはなれません。もちろん待遇もよくありません。公務員よりも待遇の悪い民間人を使って人件費をカットしているのです。東京都交通局以外でもこういった手段は使われています。
公営バスでさえもここまでしなくてはならない経営状態なのです。もちろん民間のバス会社はこれよりもっとひどいです。

運転以外のストレス増加

バス運転手はサービス業とされています。特に接客態度に関しては今後ますますうるさくなっていきます。苦情の増加などにより運転以外のストレスが増えていきます。
接客のストレスに関しては詳しくはバス運転手には接客態度が必要をご覧ください。
これを監視するドライブレコーダーの設置も増えていきます。
ドライブレコーダーは本来は事故発生時の証拠保全のためという名目でしたが実際は運転手の勤務態度を監視、指導するために使われています。人権無視もはなはだしいです。
バスにドライブレコーダーを設置する目的はをぜひお読みください。
また、バスならではの事件に巻き込まれる可能性もあるのです。一例として私の職場で実際にあったドア挟みが原因の傷害事件をご紹介します。
バスのドアに客を挟むと傷害事件になるをご覧ください。

事故の危険は増えていく

今後はバスの人身事故は増えていきます。
バスの人身事故の大半は車内事故です。人身事故の全責任を運転手が背負う恐ろしいものです。今後高齢者のバス利用者が増えていくため車内事故は青天井に増えていきます。
詳しくはバスの車内事故は責任重大をご覧ください。

貸切や高速バスは

貸し切りバスや高速バスはもっと悲惨です。
日帰りバスツアーや福祉輸送などの「キツイけど稼げない」仕事の増加によって今後は低所得化が進むでしょう。これによって生活を維持するための過労など、さらなる状況の悪化が容易に予想できます。
詳しくは貸し切りバス運転手の労働時間に上限なしをご覧ください。
貸し切りバス運転手は本当に無理をしすぎています。近年世間を騒がせている高速バスの重大事故の原因に関して研究しました。
高速バスの重大事故の原因を追究するをご覧ください。

バス運転手になるには

それでもバス運転手になりたい方はどうするべきか。
まずは「大型二種」という運転免許が必要です。
以前は「一発」と呼ばれる免許試験場に実技試験(実地試験)を受けに行く方法しかありませんでしたが現在では教習所でとることが出来ます。(私も教習所でとりました。)
また、大手のバス会社では運転手養成制度というものを行っている会社も増えてきています。
これは大型二種免許の取得費用をバス会社が負担してくれるというものです。求人票に大型二種免許を持っていない方でも応募できるといった記載があるのはこの制度があるからです。この制度を利用するのも良いでしょう。
しかし、この養成制度には注意点があります。
養成制度を利用して免許を取得した場合は一定期間は退職できないという制限があります。実際にはどうしても辞めたいとなった場合は拘束はできませんから会社に負担してもらった免許取得費用を返済すれば退職できる契約となっています。この退職制限期間は会社によって異なりますが多くの場合は3~5年です。
私の会社の場合は3年です。新人さんは「執行猶予期間」と呼んでいます。大型二種免許取得の教習所料金は40万円前後が相場です。いきなりこの金額を請求されて払えますか?
この退職制限のシステムは免許の取得だけですぐにやめられたら会社にとっては損ですから当然と言ってもいいですね。
ほとんどの場合、「採用後の一定期間内に免許を取得しないと採用取り消し、教習所の料金は自己負担」という規定があります。実際に私の会社の場合、三か月以内に免許を取れないと採用取り消しです。卒業検定などで落ちてしまい、時間切れになる人も結構います。この場合はその時点で教習所をやめてもそこまでの教習費用は自己負担で払わなくてはなりません。
また、大型二種の免許をとれる教習所は多くはありません。養成制度の場合はバス会社のグループ企業だったり提携しているなど教習所が限定されています。なので場所によっては自宅から教習所に通えないほど遠い場合もあります。
遠くの教習所まで通ったのに場合によっては料金を自己負担しなくてはならない可能性もあります。養成制度は中身を分かっていないと後悔する人もいます。
私は大型二種の免許の取得には養成制度の利用よりもご自分で取得することをおすすめします。勤務開始後にやっぱり仕事が自分には合わないので辞めたくなっても退職制限期間に縛られます。新人のうちは事故も多いので免停や免許取り消しの可能性もあります。
卒業検定や学科試験も難しいですから数か月の期間限定ではかなり厳しいです。遠方から通う人の場合はなおさらです。自分で取る場合は教習所は選べるし、時間制限もありません。

このページのまとめ

以上が私の10年の経験から導き出したバス業界の未来予想図です。バス業界の現状と今後予想されうる姿はわかっていただけましたか?今後は介護職や保育士などと同じく、きつくて薄給の不人気な職業となっていくでしょう。
前述のように常に人手不足で年中求人しています。いつでもなれる職業です。もう一度考え直してからでも遅くはありません。
ご存知かとは思いますが、ドライバー業界は超人手不足で売り手市場です。バス運転手以外にも魅力的な求人がたくさんあります。ドライバー数が少なくなっているので売り手市場の業界です。バスの仕事を探す前に他の仕事と比べてみてください。一度バス業界に入るとなかなか抜け出せません。休みがほとんどないため面接に行くこともままなりません。
このサイトを見てくれたあなたが私の二の舞にならないことを願っています。
以上、バス業界の今後の動向、バス運転手の将来についてお伝えしました。